はじめに

トレーダーの皆さん、今日も元気にトレードしていますか?

9割が負けているとも言われる相場の世界で、継続して本当に勝ち続けている人は素晴らしいと思います。

さて、基本的にトレードはマーケット参加者による札束での殴り合いみたいなものですが、一部ではそうとは言えないものがあります。

今回はそれに関連したFX業界の闇についてお話しようと思います。

闇とは言っても界隈をよく知っている方にとっては既知の話ですが、暗号通貨から初めてトレードに参加していて、なおかつ普段は通常の取引所で売買している方の場合にはあまり馴染みがないかもしれません。

FX業者の注文種類

まず最初に基礎知識として、FX業者の注文種類について解説します。

これにはおおまかに二種類あり、一つはDealing Desk(DD)、もう一つがNo Dealing Desk(NDD)です。

DDはB-book、NDDはA-bookとも呼ばれています。

Dealing Desk

DDはいわゆる相対取引(OTC - Over The Counter)と呼ばれており、顧客の注文に対して業者が相手側となるものです。

この時、FX業者はカバー先のプライムブローカーなどの金融機関が掲示している為替レートを参考にし、顧客にはFX業者が独自に付けたレートを提供します。

このレートは実際の市場価格ではなく業者独自のものであるため、スプレッド(売買価格差)も自由に操作することができます。

DDを採用している業者の場合、表示上ではスプレッドが低い傾向にありますが、様々な点から最終的なスプレッドはやや高めになると思われます。

また、DDでは顧客の注文をインターバンク市場(金融機関の市場)やカバー先の金融機関へ流すか、あるいは顧客同士の注文と相殺させるかどうかは業者が判断しています。

つまりDealing Deskとは、ディーラーであるFX業者が判断して顧客注文を処理しています。

DD方式では顧客の注文が市場へ流れているかどうかすらわからないため、透明性に欠けています。

ちなみに国内FX業者の大半はこのDD方式を採用しています。

No Dealing Desk

DDに対してNDDは顧客注文をFX業者による判断を経由することなく、そのまま市場かカバー先へ流しています。

海外FX業者はNDD方式を採用しているところが比較的多めです。

国内では2014年まで大阪証券取引所が運営していた大証FXや、東京金融取引所によるくりっく365がNDDに該当しています。

大証FXでは通常の株式売買のような取引者同士で注文が成立するオークション形式でしたが、くりっく365ではインターバンク市場のレートを掲示する複数のマーケットメイカー(Market Maker)が取引相手となるマーケットメイカー方式です。

マーケットメイカー方式ではMMの言い値でしか売買できないので、実際には相対取引に近いものとなっています。

それを裏付けるのが2013年から行われているくりっく365の取引手数料無料化であり、無料化に伴う損失の穴埋めのために東京金融取引所はMMへの手数料を増加させており、各MMは負担の増加分を補うために掲示するレートに利益となるスプレッドを加算する必要がありました。

このことから、くりっく365ではNDD業者の中でもスプレッドが広くなっています(365ラージでは手数料有り+低スプレッド)。

なお、NDDには処理方法が主に2つあります。

Straight Through Processing

Straight Through Processing(STP)では、顧客注文を流動性供給(Liquidity Provider)を行うカバー先の金融機関へ流す方式です。

これはカバー先による価格掲示を元にしていますが、業者はそこに自身の利益分のスプレッドを加えた後に顧客にレート提供しています。

市場ではなくLPに直接注文を流しているため、LPの状況によってはレートが不安定な場合があります。

例えば、2009年10月30日にくりっく365で発生した南アフリカランド(ZAR)/日本円(JPY)のコメルツ銀行によるレート異常では、11.5円付近にあった相場が売値のみ8.435円まで一瞬で暴落し、それによるロスカットで多額の損害を被るトレーダーが続出しました。更にこれが発端で南アフリカランドそのものも急落することとなりました。

この事件に関して東京金融取引所は、MMが掲示したレートであるために問題はないと表明していましたが、被害を受けたトレーダーから東京金融取引所およびコメルツ銀行へ集団訴訟を提起される事態となり、最終的にロスカットされた被害者には当該価格で反対売買を行うという救済がなされています。

異常発生の要因として東京金融取引所は、レートを掲示するシステムが各種マーケットの流動性の低下により、極めて広いスプレッドのレート提示を行ったことであると述べています。

マーケットの状態によってはこのような事が発生するため、カバー先の金融機関がインターバンク市場と同じレートを提供するとは限りません。

Electronic Communications Network

そしてElectronic Communications Network(ECN)は、金融機関やFX業者同士が提携している私設取引所にそのまま注文を流す方式です。

小口トレーダーのみの注文では流動性が低くて使い物にならないため、金融機関やFX業者が流動性を供給することで改善させています。

ECNでは通常の板取引のように取引の相手方を確認しながら売買することができるため、取引の透明性が高くなっています(なので板情報が見れない場合はECNではない)。

また、実際に取引されている市場なのでスプレッドは市場状況によってその都度変化しており、この方式では顧客が売買するごとにFX業者が手数料を請求するシステムをとっています。

ちなみにECNは各金融機関の交換レートや板情報を集約して業者に提供する、アグリゲータ(Aggregator)という事業体から誕生したものです。

アグリゲータはFX業者からの注文を集約して金融機関に注文を出しますが、その注文は大小様々です。

しかし金融機関へ注文するには最低ロットが設定されていて一回の注文には数万ロット以上が必要となるため、場合によっては注文の通らないものばかりとなってしまいます。

その解決方法として、FX業者同士はそれぞれが保有する注文を相殺することで金融機関を経由しないカバー取引を用いるようになりました。

これが更に発展して多くのFX業者や金融機関を一つのマーケットに集めたのがECNです。

ECNの登場後には、アグリゲータが持つ与信枠を小規模FX業者に与えることで大手金融機関への流動性ルーティングなどを行える、Prime of Primeという新たなビジネスも生まれています。

Instant ExecutionとMarket Execution

STPとECNにもそれぞれ異なる注文処理方法があります。

それがInstant ExecutionとMarket Executionです。

Instant Executionはプログラムが顧客注文を自動決済しますが、その際に他の顧客注文と相殺できる部分は相殺し、残った注文分はカバー先へ流しています。これは主にSTPで用いられていますが、プログラムが一時的に注文を保留している(呑む)ため、相場状況によっては約定拒否が発生する場合もあります。

次にMarket Executionですが、これは顧客注文をそのままカバー先や市場に流しています。Instant Executionとは異なり、呑むという状況が存在しないため、必ず約定します。これは主にECNで用いられています。

このように同じNDDでも処理方法によって呑む行為があったりするので、NDDでも透明性が完全にあるとは限りません。

Dealing Desk方式の問題点

DD、NDDと色々紹介しましたが、これらの中ではDDに大きな問題があると頻繁に指摘されています。

理由として、NDDでは業者の利益は仲介手数料をメインにしているのに対して、DDでは顧客の損失が業者の利益となりがちだからです。

DDでは低スプレッドが多いことから、手数料収入以外の方法に頼らざるを得ません。

その方法の一つが呑み(のみ)行為です。

呑み行為

呑み行為は簡単に言うと、取引の仲介者が顧客の希望した市場へ注文を流さずに自身が取引元になることです。

例を挙げるなら、1万円分の馬券を購入してくれたら仲介料として1,000円を渡す契約があったとします。

このとき、仲介者は購入予定の馬券は外れると読んでおり、仲介者は1万円分の馬券を買わずに自身のサイフに入れました(仲介元には買ったと報告)。

その後購入予定だった馬券は仲介者の予想通りハズレになり、1万円および仲介料1,000円が仲介者の利益となりました。

ただ、仮に当たり馬券だった場合には仲介者は顧客に当たった分を支払う必要があります。

ここで問題となるのが、仲介者と顧客は利益相反の関係にあることです。これはDD方式の業者と顧客の場合でも同じです。

もしDD業者が顧客の注文すべてを呑んでいた場合、顧客が勝てば勝つほど業者に損失が発生することになります。

実際の話では一定のリスク管理を業者側は行っているため、大口の注文やポジションの偏りによる影響等があった場合にはインターバンク市場かカバー先に顧客注文を流しています。

逆に顧客自身が損失を生む可能性のある(負けそうな)取引は、市場に流さずに保留状態にしておきます。

本来呑み行為は場合によっては詐欺罪に該当したり、法律でも証券取引法や金融先物取引法で禁止されていましたが、2004年の法改正によって最良執行義務(顧客注文を最良条件で執行する方針を定め、公表および執行する義務)が導入されたことから該当する項目が削除されました。

つまり、FXや株式先物のような金融取引に関しては事前告知が必要なものの、呑み行為そのものを認めています。

というようにFX業者が行う呑み行為自体は法律上禁止されていないため、法令に従って正しく行われたものであれば全く問題がありません。

ただし問題となるのが、先述した呑み行為に付随する多くの手段(いやがらせ)です。

つまり、呑み行為による優位性および利益を生むために、一部のDD業者は顧客ができるだけ利益を生まないように働きかけています。

その一つがスリッページ(Slippage)です。

スリッページ

スリッページとはその言葉の通り、注文を執行したものの、意図していた場所から一定数ズレてしまう(滑る)ものです。

本来スリッページは、自分の注文にとって良い方向にも悪い方向に動くものです(ロングであれば意図した場所より安く執行できれば良く、高く執行すれば悪い)。

これは普段取引所で注文を行っている方なら理解できると思います。

しかし、DD業者で注文を行った場合では、自身の注文に対して悪い方向でしか約定してくれません。

逆にNDD業者では良い方向で約定することもあります。

これはいくつかのFX業者を利用した事がある方にとって、経験したことがある事が多いでしょう。

このようなスリッページは非対称スリッページとも呼ばれ、2013年8月に金融庁によって禁止されています。

けれども数年前には楽天証券が提供しているFXCMで非対称スリッページがあったことから、過怠金900万円の処分が下されています。

罰金があるとはいえ実際にはそこまで影響が無いため、罰金と利益を天秤にかけた場合には当然利益の方が大きくなります。

注文の拒否および遅延

次に注文の拒否について、これはリクオート(Requote)またはリジェクト(Reject)とも呼ばれています。

良いレートを見つけて注文を行ったものの、注文が拒否されてしまい、その後更新されたレートが掲示されるというものです。

これは一度だけでなく、何度も繰り返して行われることもあります。

リクオートに関しても経験者は多いと思われます。

しかし更に酷いのが注文の遅延です。

もし保有しているポジションがロスカットされるラインまで到達したので損切りしようとしても、全く注文が受け付けなかったら誰でも相当な恐怖を覚えると思います。

このような話は実際に裁判沙汰になっており、賠償命令が下るほどの悪質なものでした。

この裁判では松井証券に支払い命令が下されましたが、その際に裁判長は「ロスカットまでに一定のタイムラグが生じることは契約上想定されているが、10秒を超えれば合理的範囲内とはいえない」と発言しています。

つまり、10秒以下での遅延であれば問題はないとのお墨付きを与えたようなものなので、現在でも当たり前のように遅延は行われます。

約定取消

業者によっては利用規約に違反したという名目で、約定そのもののが遡及的に取り消しされることもあります。

これは裁定取引、別名だとアービトラージ(Arbitrage)と呼ばれる取引が少なからず影響しています。

裁定取引は他にも鞘取りとも言いますが、これは本来価格が同じである2つの商品にズレが生じたとき、高い方を売って安い方を買うことでその値幅(サヤ)を利益にする手法です。

先程説明したように、DD業者は独自のレートを用いて顧客に価格掲示を行っていますが、場合によっては業者間で一定の価格ズレが発生してしまうこともあります。

裁定取引は極めて勝率が高い手法であり、これを利用すると顧客がほぼ確実に利益を得てしまうため、DD業者は確実に阻止したいと考えます。

DD業者の多くは高速売買を意味するスキャルピングを禁止にしているところが多いですが、その理由の大半は裁定取引を行わせないためです(他にも超短期売買は妨害が間に合いにくいため)。

なので裁定取引を見つけた場合には、スキャルピングを行った=利用規約に違反したとして、約定そのものが後になって取り消される可能性があります。

スキャルピング禁止の理由としてサーバの負荷を軽減するため、という話もありますがHFT(High Frequency Trading)のようなBotによる超高速売買でもない限り、個人トレーダーによるスキャルピングの負荷は全く無いに等しいものです。

むしろそれで負荷が発生するような業者は相場急変時にまともに動かなくなるので使うべきではありません。

偽NDD業者

通常はNDD方式を謳っているものの、場合によってはDD方式を使っている業者も国内外問わずあるので、規約等をよく読んでおく必要があります。

分かりやすいのはスキャルピングの禁止や注文上限の制限、多額のボーナス機能に100倍以上のレバレッジ採用などです。

これらは顧客の利益阻止に加え、新規顧客を取り込むためエサとして利用されている事が明らかです。

基本的にDD業者はNDD業者と比べて利益が大きく、頻繁に行われる必要以上のキャッシュバック等のボーナスはそれだけ潤沢に広告費用があるということを意味しています。NDDの場合はボーナスでの集客に対する利益が少ないので、そもそもボーナス自体やっていないところが多いです。

極端に高いレバレッジに関しては、通常カバー先の金融機関は最大でも100倍程度までしかレバレッジをサポートしていません(そもそも金融機関ではハイレバレッジに対応しているペア自体少ない)。

それにも関わらず非常に高いレバレッジを使えるということは、FX業者が更に上乗せする必要があります。

そのようなリスクを業者が取ることはまずありえないので、結果的に呑むことでしか成立しません(つまりNDDではなくDD業者)。

高すぎるレバレッジは少し逆行しただけでロスカットされる極めてリスクの高い取引であり、当然ながら大半が負けています。

なのでそのような取引が来ても呑んでおけばすぐに業者の利益と化します。

業者によっては取引残高によって最大レバレッジが変動する場合もあり、ハイレバレッジと言っても結局は少額でしか使えないということもあります。

ゼロカット

ゼロカットとはトレードの結果によって口座残高がマイナスになった場合にそのマイナス分を無効化してくれるシステムです(スイスフランショックでのFXDDのようにゼロカットを無効化するケースもあります)。

ハイレバレッジとゼロカットは基本セットであり、追証のリスクを消しながらハイレバレッジでの取引ができるという格好の宣伝文句を持っているため、客寄せするためには非常に有用なアイテムです。

ただし、ゼロカット業者も基本的にDD業者です。顧客にとって高リスクの注文は呑んでおけばいいだけなので問題ありません。

とはいえ、海外業者の場合は追加の顧客資金回収が困難なため、実質ゼロカットになっている業者は多いのですが、ロスカット基準(証拠金維持率)が100%を大きく下回っているような顧客リスクの高い業者はDDである疑いが強いです。

ちなみに国内ではゼロカットは法律上禁止されているので一切採用されていません。なので、ロスカット基準を下回った場合は追加の金銭を支払う必要(追証)があります。

金融ライセンス

FX業者が取得している金融ライセンスがどこの国に属しているかによってもDD業者かどうかを判別することができます。

理由として、誰でも取得できるような信用度の低いライセンスではカバー元の金融機関が注文を受け付けにくいからです。

日本やアメリカ、イギリスなどのライセンスは非常に厳しいのでその分大きな信用を持っていますが、海外業者でよく見かける国のライセンスは大抵信用度が低いものです。

近年では各国金融ライセンスの見直しが行われて厳格化する傾向にありますが、タックスヘイブンでもよく用いられているオフショアに該当する国はまだまだ緩いので注意が必要です。

厳しいライセンスでは顧客保護のために信託保全や外部機関によるあらゆる監査が行われていますが、簡単に取得できるライセンスではそのような規定を設けているところは少ないです。

なので万が一何かあったとしても何も保証してくれませんし、悪質な所であれば顧客資産を持ったまま消失します。

そして訴訟を起こそうにも海外なので手間と費用が段違いです。

Virtual Dealer Plug-in

海外FXではMetaTraderと呼ばれる専用のチャートソフトがよく利用されています(主にMT4)。

MetaTrader自体は比較的扱いやすいツールで人気なのですが、もともとこれは相対取引用に設計されたものです。

そのため、業者ではなく市場に繋ぐにはSTPかECNブリッジを行うプラグインが必要となっています。

仮にMetaTraderを使っているのにNDDを謳っている業者を見かけた場合には、DDとNDDを状況によって使い分けている可能性があります。

というようにDD業者用に作られているという性質から、その影ではVirtual Dealer Plug-in(VDP)と呼ばれるものが暗躍しています。

VDPとは勝ち続けているトレーダーを自動で発見し、そのトレーダーに対してスリッページや約定拒否などを意図的に発生させる機能を持ったプログラムです。

言ってみればDD業者のディーラー作業を手動で行うのではなく、プログラム制御によって自動で行います。

VDPは業者のサーバーにインストールされているタイプなのでウィルスのように見つけることは不可能であり、取引履歴などを用いて怪しい部分を特定するしかありません。

これには実在を証明している資料があります。なお、これらは数あるVDPの一部にしかすぎません。

以下はMetaTraderを開発しているMetaQuotes Softwareが2006年にリリースした、Virtual Dealer Plug-inのドキュメントです(現在はMetaQuotesの公式サイトに掲載されてません)。

こちらはトレード関連のサービスを開発、提供しているロシアの企業であるTakeprofitTech社が作成したVDPです。

2006年という10年以上も前からVDPの存在が確認されているということは、現在であればほぼすべてのDD業者に同様のツールが導入されていてもおかしくありません。

何故なら、あらゆる要素が高度に自動化されている現在、業者側もコストを下げつつより効率的に利益を上げるためには必須のものとなっているからです。

上記プラグインはMT4に限定されたツールですが、国内FX業者の大半はMetaTraderを使用せずに独自のソフトウェアを用いています。

なのでプラグインを使えないから安心と思ってしまいがちですが、実際には独自ツールを用いた方が何もかもをすべて自社で管理できるため、問題ないというわけではありません。

そもそもMetaTraderにはライセンス使用料があり、MT4やMT5などを導入している業者はMetaQuotes社に取引量に応じた料金を支払う契約があります。

そのため、MT4を利用できる業者はそのコストを賄うためにややスプレッドが大きくなりがちです。

また、MetaTraderでは自動トレード機能があり、最初から多くのストラテジー(戦略)が用意されています。ただこの機能により国内では投資助言代理業の資格が必要となりました。これは管理体制を整えたり審査も必要になることから大きな手間となります。

しかし自社開発したソフトウェアであれば、これらコストも浮くのでスプレッドを小さくすることができます。

更にあらゆる顧客情報を管理することもできるために良い事尽くめであり、完全にMetaTraderを使う理由がありません。

出金拒否

これまで色々と問題点を語ってきましたが、この中でも最大の難関が出金拒否です。

DD業者からすれば別に嫌がらせを行わなくても、規約違反だと難癖をつけて出金そのものをさせなければ業者は利益を取られる心配がないので完全にノーダメージです。

そのため、DD業者のFXサービスをよく利用しているトレーダーは短期間に大勝ちせず、そして利益が一定額出る度に出金を繰り返す手法をよく用いています。

国内では出金拒否レベルはあまり見かけませんが、それ以前に規約違反等で勝ちをなかったことにされる、または出金できてもその後出禁にされるケースの方が多いです。

出金が申請から何週間もかかるケースもあるため、精神衛生上にもよくありません。

勝てるトレーダーは不要

DD業者の利益は手数料ではなく顧客の損失であるため、彼らにとって勝ち続けているトレーダーは完全に敵です。

そのため、業者は勝つトレーダーに徹底的な嫌がらせを行い、場合によっては利用規約違反として完全出禁にすることもあります。

ツイッター等のSNSでもたまに見かけますが、DD業者で大金を稼いだトレーダーの多くは突然嫌がらせが始まり、最終的に業者から締め出されています。

すべてのDD業者が悪というわけではありませんが、透明性に欠けた取引を行っているのは事実であるため注意が必要です。

NDDでも安心はできない

DD業者は目立ちやすいので頻繁に目の敵にされますが、実はNDDでも安心できません。

結局の所、NDDでも注文は使用しているFX業者から出されるので、注文の提出先であるLPや市場がFX業者と結託していた場合にはDD業者と変わりありません。

表向きでは多数のLPが用意されているように見えても、実際の注文はFX業者の関連企業しか通っていなかったというケースも考えられます。

そして透明性が高いとされるECNでも、Lastlookという特殊な設定を使用している場合があります。

Lastlook

ECNは必ず約定する性質を持っていますが、場合によっては約定するまでに複数の約定拒否による遅延が発生する場合もあります。

それはLastlookと呼ばれる設定が影響している可能性が考えられます。

Lastlookは流動性を提供している金融機関が顧客注文を約定前に閲覧し、利害に応じて取引を実行するかどうかを決める設定で、金融機関は自身の利益を保護するために、顧客注文が価格に先行しないようにこの措置を講じています。

例えば、トレーダーが流動性供給者である金融機関に対して注文を送信した際、金融機関側のレート更新遅延などでその他の為替レートとズレている価格だった場合、トレーダーは即座に利益を獲得することができます(いわゆる裁定取引)。

仮にこのような注文が極めて多かった場合、金融機関は多額の利益を奪われてしまうために倒産のリスクがあります。

このことから、Lastlookは金融機関に対する保護の仕組みとしても考えられていますが、一般のトレーダーからすると明らかに問題のあるシステムです。

これはECNのようなオンラインFXの初期段階から実在しており、当時は注文の実行プロセスが遅かったためにLastlookは頻繁に行われていました。

今となってはオンラインFXの取引環境は大幅に向上しているので更新遅延はほとんど発生しませんが、Lastlook自体は未だに存在しています。

例を挙げると、HFTなどのように一度に処理しきれない大量の注文をトレーダーが発注したときや、スイスフランショックや各種災害のような市場へのインパクトが激しいイベントでは、この現象が頻繁に発生します。

つまり、ECNを提供している業者が流動性供給者に特別なオプションの行使権利を付与していることを意味しています。

そのため、もしECNでの取引を行おうとしている場合には、ECNを提供している業者がLastlookを許可しているかどうかを調査しておく必要があります。

Lastlookを許可していないECN業者は、自社のプラットフォームやウェブサイト上でその旨を明らかにしていますが、それでも確実とは言えません。

流動性供給者はECNにとって必要な存在ではありますが、Lastlookが作動した場合には繰り返し約定拒否された末に約定するため、結果的に大きなスリッページが発生してしまいます。

また、流動性供給者からするとLastlookは自衛策であるため、それが使えない場合には損失の穴埋めのために提供するレートに大きめのスプレッドを加える必要が出てくるというデメリットもありますが、どちらにせよ透明性および公平性に欠けたシステムなのは明らかです。

実際に複数の規制当局はLastlookに関する調査を行っており、2015年にはこの機能を乱用したとされるバークレイズに1億5000万ドルの罰金を課しています。

おわりに

長々と語ってきましたが、FX業界ではあまりにも怪しい業者が多いため、信用というものが本当に大切になってきます。

検索でよく出てくるような国内外のFX業者には甘い言葉が多く用いられていますが、上手い話には裏があるものです。

一部国内業者ではトルコリラやメキシコペソ、南アフリカランドのスワップが良いという話をよく見かけますが、まともな業者であれば変動リスクの高い通貨を知識の疎い一般人に勧めること自体ありえません。何故勧めるのかというと顧客の損失が自社の利益となるからです。

国内FXは海外FXと比べてある程度は法整備されていたり、税制上でも優遇されているのでありがたく感じますが、国内の大半はDD業者でNDDと言いつつDDもしている業者も多いので、結局は利益相反の関係になっているケースもあります。

業者の酷い対応によって最終的に裁判になっている例も多く、悪質商法として詳細に公開している法律事務所もあります。

海外でも数々の問題があるため、極めて厳しい金融ライセンスを持つイギリスでは、イングランド銀行がFX業界向けのレビューを実施していてFX業界の改善に向けて働きかけていましたが、過去2年間の調査では多くのFX業者の状況が改善しなかったとの結果が出ています。

とはいえ、業者側も慈善事業で行っているわけでないので、小銭を拾う程度などで彼らが嫌うような事をしなければそこまで影響はありません。

大抵のケースで嫌がらせが起きるのは勝ち続けているトレーダーなので、何もしなくても負け続けてくれるトレーダーは彼らにとって宝のような存在です。

DD業者は基本的にスプレッドが低いので少額であれば稼ぐことができますし、それに対してNDDでは手数料が取引ごとにかかるので場合によっては負担が大きくなります。

しかし、彼らの顔色を伺いながらチマチマしたトレードを行うのはトレーダーとしてどうなのでしょうか。

気にならない方もいるかもしれませんが、様々な点で透明性、公平性のない優位性の欠けているマーケットでのトレードは個人的にはやるべきではありません。

影響する要素が膨大というのもありますが、多くの優秀なトレーダーがFXは難しいと言っているのも当然のことです。

そして、相対取引はFX市場にだけに限ったものではなく、例えば暗号通貨でもMT4を用いた業者をよく見かけていますが、先程も言ったようにMTは相対取引用に設計されたものなので大抵はDDです。

他にも原油や株価指数などでよく見かけるCFDも証券会社が取引の相手方となっている相対取引です。

マーケットで様々な人々と売買していると思っても、実は業者のシステム内でしか回っていなかった事も十分にあり得ます。

つまりトレーダー同士による札束の殴り合いという対人ゲームが元々成立していません。

貴重な情報である出来高の影響(FXでは出来高は正しく機能できない)や各種情報の透明性を考えると、FXよりも株式市場か暗号通貨市場のような取引所でのオークション形式による板取引の方がまだ許容できます。

株式市場でも証券会社によっては、SORを悪用したSBI証券の問題や、個人と機関投資家の間での入手できる情報および戦略の格差、暗号通貨では巨額の仮装売買に頻繁な出金制限、そして双方共に相場操縦などの問題もありますが、それぞれのトレーダーが自由に売買できる生きたマーケットの存在は大切です。

以上のことから、私自身は相対取引ではなく信頼できる取引所で売買することをおすすめしています。

例えば東京証券取引所やニューヨーク証券取引所を経由した株式市場の板取引(私設取引は使わない)、そして比較的信頼できる暗号通貨取引所での板取引です(販売所は相対取引)。

株式市場であれば信用取引の手数料が無料の証券会社が多いので比較的自由に売買できますし(ただしその穴埋めで何らかが犠牲になっています)、暗号通貨であれば株と違って小数点以下の単元で注文できることから注文の自由度がかなり高いです。そして暗号通貨は入手できる情報量が段違いです。

海外業者に関しては厳しいライセンスを取得しているところ以外はおすすめしません。

ただ、日本の金融庁は海外のFX業者が日本在住者を勧誘することを禁止しており、そのような業者は金融庁にマークされています。

日本向けに勧誘を行っている海外の暗号通貨取引所も同様にマークされ、使用自体は禁止されていませんが、万が一何かあっても保証は一切ありません。

私自身は運営実績と取引高の大きさおよび入出金の可否などを考慮した上で、海外の暗号通貨取引所をいくつか利用していますが、例え上位の取引所でもハッキングや情勢の影響等を含めたリスクは常にあります。

昨今ではDeFiの発展により取引所を頼ることなくトレードもできますが、まだまだこれからの段階なのであらゆるトレードができるわけでもありません。

なんにせよ、勝ち続けているトレーダーはリスク管理を行いつつまともな業者を使っていますし、明らかに質の悪い業者を勧めている人がいれば、それは(主にアフィリエイトを目的とした)トレード経験の少ない人またはバーチャルトレーダーなので要注意です。そもそもまともな業者は広告費の関係上報酬が少ないもしくは広告をほとんど出していないため、アフィリエイターが勧めることは少なくなっています。

だいぶ長くなってしまいましたが、自分がトレードをしている場所は本当に開かれたマーケットなのかどうか、一度は考えてみる必要はあると思います。

参考資料