はじめに

これまでの記事でオーダーフローによるトレーディング手法について解説してきました。

これら手法は有用なものですが、肝心のどのプラットフォームを使えば良いのかがわからない人は多いと思います。

オーダーフローに限らず便利な機能を使えるところは多くありますが、情報が欠けた状態で見つけようとしても完全に手探り状態なので、最適なプラットフォームを見つけるのはなかなか骨の折れる作業です。調査が得意で更に英語に堪能している人でなければそれは尚更でしょう。

よく設計されたトレーディングプラットフォームは多くの機能を有しているため、取引所や簡易的な分析を使っているよりも、多くの視点を加えることが可能です。それは分析だけに留まらず、トレードにありがちなさまざまな手間を排除するものもあります。

今回はそのような中でも暗号通貨トレーダーにも使える、便利なトレーディングプラットフォームを紹介していきます。

Sierra Chart

Sierra Chartはカスタマイズ性が極めて優れている

Sierra Chart(SC)は1996年から現在に至るまで開発が行われている、非常に老舗のトレーディングプラットフォームです。

このプラットフォームの優れている点は驚くほどの機能の多さとカスタマイズ性、そしてソフトウェアそのものの軽量さ(開発言語はC++)です。

公式サイトのFeaturesページではSCの機能の多くが記載されていますが、本当にできることが多く、既存のプラットフォームでは間違いなくトップレベルの豊富さです。

一例を挙げると、SCには300を超えるテクニカルインジケーターがあり、描画ツールなどもすべて完全にカスタマイズ可能です。チャート描画の種類も18種類も用意されており、それに加えて高度なTPOプロファイルとボリュームプロファイルも利用可能であり、どのようなスタイルのトレーダーでもほとんど問題なく受け入れを行うことが出来ます。

トレードできる種類もかなりの量で、株式、オプション、債券、外国為替、商品、暗号通貨など、あらゆるマーケットでトレーディングすることが可能となっています。

ただし、暗号通貨に関してはBitMEXのみトレード可能です(しかし消極的サポート)。マーケットデータの取得はBinance、Bitfinex、BitMEX、Deribit、FTXが可能です。

なお、SCではそれぞれの機能に関するドキュメントも極めて充実しており、細部に渡って学ぶことが可能です。

SCの利用プランにはパッケージごとに月額26ドルから59ドルまでのサブスクライブ方式(複数月契約で最大20%オフ)が用意されており、買い切り型のものは存在しません。

しかしこれほどまでの機能を有している場合、本来ならばかなりの高額になっていてもおかしくないため、非常に良心的な価格設定となっています(新規ユーザには15日の試用期間あり)。

というようにSierra Chartは極めて優秀なトレーディングプラットフォームであることから、個人や企業を問わず、ハイレベルなトレーダーからも一目置かれている存在です。

けれども、あまりにも豊富な機能のため、学習しなければならない要素が相当多くなります。

その機能の多さから各種設定項目は一画面にかなり詰め込まれているので、初見ではやや抵抗感があることでしょう。

そしてそれを更に悪化させてしまうのがSC固有のUIです。

SCのウェブサイトを見るとまるでインターネット初期のような非常に古いデザインをしていますが、そのデザインはプラットフォームでも同様です。

昨今のようなグラフィカルなデザインではなく、かなり簡略化されたものであるため、人によっては使うことに苦痛を感じてしまいます。

ただ、トレードにおいて遅延や動作不良は致命的であることから、非常に軽量な動作をするために可能な限りあらゆる無駄を省いており、その結果このようなUIになっています(カスタマイズによってある程度改善可能です)。

とっつきにくいデザインで人を選ぶのが欠点ではありますが、学習の多さとUIを克服できるならば、間違いなくおすすめできる本当に素晴らしいプラットフォームです。

当サイトではSierra Chartの使い方について紹介しているため、気になっている方はぜひご覧ください。

Exocharts

Exochartsは暗号通貨のオーダーフローに特化している

Exochartsは暗号通貨トレーダー向けのプラットフォームで、データはすべて暗号通貨に関するもの限定となっています。

以前まではウェブブラウザを通してのみ分析および取引を行えたプラットフォームですが、現在では更に多くの機能を搭載したデスクトップ版も開発していて実際に利用することができます。

Exochartsはオーダーフロー分析に特化しており、フットプリントやボリュームプロファイルなどのという基本的な機能だけでなく、NetLongs、NetShorts、TradeSizeやRekt(清算)といったインジケーターも用意しており、トレード分析における多数の視点を提供しています。

Exochartsはサポートも優秀であり、専用のDiscordチャンネルで開発者にさまざまな質問を行えるだけでなく、トレーディングに関する情報を提供してくれます。また、コミュニティ内ではトレードに関する知見を共有し合うなどもしています。

料金プランはFree public、Trial、Premiumが用意されており、有料会員であるPremiumでは月額28ユーロ(3700円)で、3ヶ月なら75ユーロ(10%割引)、6ヶ月なら142(15%割引)となっています。

執筆時点では有料会員はPremiumのみですが、更に多くの機能を有したProプランが将来登場予定です(料金未定)。

暗号通貨に特化していることから知る人ぞ知るといった感じですが、これからの発展が非常に楽しみなプラットフォームです。

TradingView

TradingViewは圧倒的なユーザー数を誇るクラウドベースのプラットフォーム

TradingViewは2011年に設立されたプラットフォームで、トレーダー界隈では知らない人はいないほどの知名度を誇ります。

HTML5で構築されたクラウドベースのオンラインチャートはブローカーとトレーディングターミナルの統合、技術的および基本的な分析機能、高度なチャート、およびアイデアの共有や広告を含むコミュニティ関連ツールなど、非常に多岐にわたる機能を有しています。

TradingViewの際立った特徴の1つは非常に大規模なコミュニティであり、TradingViewは300万人を超えるアクティブユーザーで構成され、毎日平均3,300人の新規ユーザーが参加しています。

1,000を超える新しい公開アイデアとチャートスナップショットも毎日共有されていることから、絶え間ない情報の共有が行われます。

チャート作成およびテクニカル分析機能に関しても大規模なライブラリが付属し、10を超えるチャートタイプ、各ブラウザタブに最大8つのチャートの複数のチャートレイアウト、50を超える描画ツール、および100を超えるテクニカルインジケーターを提供します。

カスタマイズ性も非常に強力で、チャート上のほぼすべてのものを編集可能だけでなく、独自のインジケーターや戦略をコーディングすることもできます。たとえコーディングができなくとも、TradingViewのユーザーによって作成された8,000以上のカスタムインジケーターがあります。

データ分析に関しても、株式、先物、株価指数、FX、ETF、商品、債券、金利、暗号通貨など、あらゆるものをチャートに表示することができます。

更にTradingViewは多くのブローカーに接続可能であり、チャート上から直接取引を行うこともできます。

料金プランは基本的に4つあり、Basicプランは無料、Pro、Pro+、およびPremiumが有料となっています。

それぞれの月額はProで14.95ドル、Pro+は29.95ドル、Premiumは59.95ドルですが、年間契約で16%オフになります。

なお、1年のうちに大きなセールを行う時があり、そのときに契約することで出費を大きく抑えることができます(最大60%オフなど)。

このようにTradingViewは非常に優れたプラットフォームではありますが、決して完璧というわけではなく、Sierra Chartなどのオーダーフローをはじめとする深い分析ができるプラットフォームと比べると、トレードに関する情報は不十分であるといえます。

多くの分析は必要とせず、プライスアクションやその他テクニカルでトレードを行うトレーダーにとってはTradingViewは良い選択肢となるかもしれません。

前述のとおり、TradingViewはクラウドベースなので逐一読み込みが必要なプラットフォームと比べて読み込み時間が大幅に短縮されているため、手軽にチャートを見たいという人にも向いています。

巨大なコミュニティがあるという点も、多くのトレーダーと情報を共有することで知見を深められることから大きなメリットとなるでしょう。

Quantower

Quantowerはさまざまな機能を搭載した開発熱心な新興プラットフォーム

Quantowerは2017年にリリースされた、比較的新しいトレーディングプラットフォームです。

目標として「ブローカーに関係なくあらゆる市場に対応する、トレーダーが主導するユニバーサルな取引アプリを作る」を掲げており、暗号通貨、外国為替、先物、株式、オプションなどのさまざまな商品をこのプラットフォームで取引できます。

ここは対応しているブローカーがとても多く、暗号通貨ではBitMEXやBinance、FTXにDeribitにbybitなど、主要な取引所のほとんどで分析およびトレードすることができます。

トレーディングに必要なインジケーターやチャートタイプはある程度用意されており、TPOチャートやフットプリント、ヒートマップなどのオーダーフロー分析に必要なツールも複数存在しているため、さまざまなトレーダーが幅広く利用できます。

また、ここは開発熱心であると有名であり、彼らによるロードマップには多くの開発中および開発予定の要素が記載されています。これには利用者からの提案を受けたことがきっかけで開発されたものも複数あります。提案には問い合わせか、公式SNSなどでも行えます。

料金プランは4つあり、月額40ドルから100ドルまでが用意されています。

月額ではやや割高ですが、複数月契約では最大30%割引となります。他にも買い切り型のプランも用意されています。

ここで注目したいのが、Quantowerは複数の暗号通貨取引所のブローカープログラムに参加しており、所定の手続きを行うことでBinanceやFTX、Bybitなどでは『無料で全機能』を使うことが出来ます。そのため、暗号通貨トレーダーにとっては極めてお得なシステムです。

無料の仕組みは通常のリファラルと類似しており、所定の手続きを行った者がブローカー経由でトレードすることで取引手数料の一部をブローカーに還元するものです。

詳細は公式ブログにそれぞれ記載されていますので、気になった方は読んでみてください。

例としてBinanceで無料機能を使うための記事を置いておきます。

ここまでQuantowerのメリットを記載しましたが、欠点は新興のため規模がまだ小さいことと、やはりSierra Chartと比べた場合は機能不足感があることです。

他にも一部データの読み込みに時間がかかることや、長時間使用するとややアプリケーションが重たくなることも欠点です。

しかし、先述したように無料で全機能を使えるというメリットは非常に大きいため、できるだけ支払いを行いたくないけど色々使いたいという方には大変おすすめできるプラットフォームといえます。

ATAS

ATASはオーダーフローと出来高分析に特化している

ATASはオーダーフローと出来高を分析するには非常に良いプラットフォームで、専用のツールとインジケーターを幅広く提供しています。

フットプリントに関してはカスタマイズ性に優れており、より詳細に設定を変更することが可能です。

利用できるマーケットも暗号通貨と従来市場の両方をサポートしており、いくつかの取引所を通してトレードすることもできます。

また、先物業界で最大のIB(Introducing Broker)の1つであるOptimus Futuresとも提携しているため、非常に多くの先物市場にアクセス可能です。

このことからヘッジファンド等のプロのトレーダーにも愛用されています。

料金プランは月額69ユーロですが、年契約では42%割引となっており、1790ユーロの買い切り型も用意されています。

料金設定的にやや高額なイメージがありますが、暗号通貨に関しては14日間のデモ以降も、チャート作成と取引にプラットフォームを使用できます。

これは暗号通貨の専門のトレーダーにとってかなりお得な仕様です。

オーダーフローに特化したツールを使ってみたい人には十分におすすめできる優れたプラットフォームです。

Bookmap

Bookmapは独自のヒートマップシステムに極めて特化している

Bookmapは2014年に誕生した、ヒートマップに極めて特化したユニークなプラットフォームです。

ヒートマップは指値注文のレベルを視覚的に表示させた便利なシステムですが、Bookmapは成行注文を3Dバブルで強弱を表示するなど、独自の方法を利用しています。

他にも複数の取引所のヒートマップを統合して表示することも可能です。

Bookmapは約30ミリ秒でのリアルタイムヒートマップに対応していることから、スキャルピングやデイトレードなどの短期トレーダーに向いていますが、基本的なシステムしか搭載していないため、その他の複雑な分析を行うには不向きです。そのため、追加のアドオンを購入する必要があります。

利用可能な商品には先物や株式、暗号通貨が含まれています。

また、Bookmapはオンラインセミナー(ウェビナー)にも力を入れており、ブログやインタビューだけでなくビデオベースの教育コースやライブトレーディングチャットを利用することができます。

料金プランにはFree、Global(月額49ドル)、GlobalPlus(月額99ドル)、買い切り型(990~1990ドル)がありますが、暗号通貨用のプランも用意されています。

Bookmapのヒートマップは非常に優れたシステムですが、他のプラットフォームである程度代用はできるため、Bookmap一本でトレードを行うというのは現実的ではないかもしれません(しかしBookmapで利益をあげている人は多くいます)。

NinjaTrader

NinjaTraderは拡張性の高さとコミュニティの大きさが魅力

2003年に設立されたNinjaTraderは、トレーダーにソフトウェアとブローカーサービスを提供している非常に有名なプラットフォームです。

長年にわたって独自のエコシステムを構築しており、更に巨大なコミュニティがあります。公式のYoutubeチャンネルでは多くのウェビナーも配信されています。

NinjaTraderではユーザーによるコーディングが可能なので拡張性がとても高く、コミュニティではモバイルアプリ、高度なオーダーフローツール、インジケーターなどのサードパーティソフトウェアが大変多く存在しています(無料と有料に分かれています)。

プラットフォームそのものにも多くの機能が用意されており、優れたチャート作成、リアルタイム分析、カスタマイズ可能なテクニカルインジケーター、Chart Trader(チャートベースの注文入力ツール)などを利用することが可能です。

NinjaTraderはブローカーそのものの側面もあり、先物および外国為替市場へのアクセスを提供しています。他にもInteractiveBrokersやTDAmeritradeなどのサポートブローカーと提携しているため、先物、CFD、株式やオプションなど、非常に多くの市場へ接続することもできます。

しかし、暗号通貨取引所は執筆時点でCoinbaseしかサポートしておらず、他の取引所で分析やトレードすることができません。サードパーティ製ではいくつか可能ですが、接続は公式対応のものを利用できたほうが安定感は大きいでしょう。

基本的にNinjaTraderは無料で使用することができますが、特殊な注文や自動取引、バックテストなどを利用するには月額か買い切りで支払いを行う必要があります。

また、オーダーフローに特化したNinjaTraderの独自機能はで買い切り型のみ利用できます。

NinjaTraderは拡張性の高さとコミュニティの大きさがメリットではありますが、優れたサードパーティ製を探すことにお金や手間がかかりがちなのが欠点ともいえます。

GoCharting

GoChartingは様々な機能を備えたウェブベースのプラットフォーム

GoChartingは多くの機能を備えたウェブベースのトレーディングプラットフォームです。

TradingViewと同じくクラウドを用いているため、データ読み込みの時間が短縮されています。

分析およびトレードは主に暗号通貨がメインですが、オプションやNYSEの指数にも対応しています。

GoChartingには150以上の組み込みのテクニカルインジケーターと描画ツール、14のチャートタイプに対応しており、更にオーダーフローツールも用意されていることから、フットプリントやボリュームプロファイルを使った分析も可能です。

他にも独自スクリプト言語G-SCRIPTを使うことで、テクニカルインジケーター、戦略、シグナルを作成もできます。

料金プランはFree、Silver(月額6ドル)、Gold(月額20ドル)の3つが用意されています(7日間の試用期間あり)。Goldのみがフットプリントなどのオーダーフローツールを使用できます。

ウェブベースのプラットフォームとしてはTradingViewやExochartsが競合相手ですが、GoChartingでは無料でほとんどの機能を利用することができるため、軽く使ってみたいという方にはおすすめです。

おわりに

トレーディングプラットフォームは様々な個性があるため、人によって扱いやすい扱いにくいという差があると思われます。

使い方を覚えるまでに少々苦労しますが、慣れることで機能を上手く使いこなせるようになれば、トレードの上達スピードも向上することでしょう。

今回の記事では大雑把に紹介したのでこれらプラットフォームの魅力は十分に伝えきれていないと思います。そのため、少しでも気になったものがあれば、それらのウェブサイトを閲覧し、一度使ってみることをおすすめします。そして最終的に好みのものを見つけることができれば幸いです。

最後に、株と違って国内産プラットフォームを見かけないのが少々残念ではありますが、いつか良いものが出てくることを願うばかりです。

参考資料